登りたい山と登れる山は違う

 
夫れ未だ戦わずして廟算勝つ者は算を得ること多ければなり。未だ戦わずして廟算勝たざる者は算を得ること少なければなり。算多きは勝ち、算少なきは勝たず。而るを況んや算なきに於いてをや。吾此れを以てこれを観るに勝負見わる”(孫子の兵法書より)

最初に書いておいたのは孫子の兵法書に書かれている一説です。

登山に当てはめて意訳すると前もってしっかりとした準備をしてきちんと計画を立てなければ山から無事に帰ってくることはできない。そして、無事に下山できるかどうか確信の持てない山に行ってはいけないと言っています。帰ってこれるかどうか確信もないまま山に行くのは愚かな行為です。

そんなの行ってみなければわからないと言う人もいるかもしれませんが一歩間違えば命に関わる登山は下山できる確信がないなら行かない方がいいです。必ずうまくいくという確信があって初めて踏み切るべきです。

もうひとつ冒険について書かれているものがあってこれも登山にも言えると思ったので紹介します。
冒険は体力と度胸で大自然に挑むと思いがちですがこれは全くの誤解。冒険とは充分過ぎるほどの事前の準備と完璧な計画のもとで出発するもの。目標へ確実に到達し必ず生還することです。冒険だからこそ絶対に成功させなくてはいけない。

 

登山も同じです。
山に行ったら絶対に家に帰ってこないといけません。

 

つまり、雑誌を見て
うわ、この山かっけ~!
登ってみてぇ!
登ってみてぇけど写真で見ると岩ばっかで 危なくねぇ。
でもまぁ雑誌に載ってるぐらいだからおれなら行けるっしょ!
という軽い気持ちで行ってはいけないということです。

 

最近の長野県の年間遭難件数は20年前と比べて3倍になっているそうです。登山者が増えたからだと思うかもしれませんが確かに登山者も1.4倍に増えてます。しかしこれ以上に遭難件数は1.7倍と登山者の増加率より高い傾向にあります。しかもこの6割が晴天時という好条件の時に起こってます。原因の半数は滑落。登山者の技術や体力が十分ではない力量以上の山に登っているからではないか?という意見が多いようです。

 

データを調べずに雑誌などの印象で判断するといつか痛い目にあいます。


どんなルートを登るのか自分の体力や技術で大丈夫かなどを確認し足りないなら事前に準備する。事前の準備と正しい計画を作って提出共有するだけで70%成功と言えます。

 

ただし、必勝の計画があっても時としてうまくいかないのは戦も冒険も同じ。結果としてうまく行くか行かないかではなく事前にいかにしっかりと計画するかが大切です。

ではどうやって登りたい山と自分の体力・技術が適切かどうか判断するのか?
私が一番いいと思う方法は経験豊富な人や登りたい山に何度か行ったことがある人と一緒に山を歩いてみて行けそうかどうか判断してもらうことだと思います。
一緒に登れば行けるか行けないか大体分かります。

まずは日帰りで一緒に登って登りで体力を下りで技術をよく観察して連れて行っても大丈夫か判断します。
私は必ず一度ハイキングに行って、2500mを超えて岩稜帯があるところへ行く場合はボルダリングに行ったりします。岩があるところは一回クライムダウンを経験しているだけで安定感が変わってきます。

そんな人が身近にいたら苦労しないよという声が聞こえてきそうですが、身近にこんな人がいない場合は各県が作成した「山のグレーディング」も参考になると思います。

技術的難易度は5段階で評価してます。
グレードはA〜Eの5段階でAが初心者向けでEが最難関です。
難易度Cのコースを歩いていて難所の通過に不安を感じたり、道に迷ったりした場合はまだ難易度Cのレベルに達していないと判断できます。Cのコースを問題なく歩くことができるようになって次のDレベルのコースにステップアップできると考えます。
なんだか少し大げさじゃないですか?
と思われるかもしれませんが、難易度の高い事故の多い山域に行く場合はこれぐらい大げさな方がちょうどいいです。